反貧困ネットワークの今年度の重点課題として準備してきた「相談支援員基礎研修」の第二回を開催しました。講師は、前回に続いて高山直子さん、セクハラなどの性的被害やDV、女性の労働問題を専門にするカウンセラーです。東京都内で「カウンセリング&サポートサービスN」を開設しています。
●反貧困ネットワークで相談支援業務に従事するスタッフと理事に加えて、事務所に同居するワーカーズコープの相談支援職員2名も加わり、15名の参加で受講しました。
●反貧困ネットワークでは、この3年間、支援スタッフは日夜問わず支援に追われてきましたが、日を追うごとに複雑で困難なケースが増え、スタッフにも疲れが溜まってきています。精神疾患、DV被害者や自殺念慮などを抱えている相談者の対応力を強めるための研修を定期的に続けること、看護師や専門家など、常時、相談できる体制の充実が必要となっています。
●何よりも良かったことは、反貧困ネットワークを構成するみんなで、受講してグループワークで対話できた共通の時間が持てたこと、誰かが「こうあるべき」と断定するのでなく、チームや仲間の想いを知り、知恵をだしあうことの大切さです。
●高山さんは「組織内で支援について”共通言語”を持つことが大切」とおっしゃっていました。※共通言語(共通意識)とは、第1回目の内容である、Non-judgemental、Genuineness、同情と共感の違い、アドバイスと情報提供の違いなどなどです。相談者に「安心・安全」な環境を提供するために「共通言語(共通意識)」を持つことは、支援者にとっても、疲弊するリスクの低い「安心・安全」な環境が作れるということになる。つまり、共通言語(共通意識)を持つことは、安全な組織をつくることにつながります。相談支援員研修で学んだことは、支援の現場だけでなく、毎日のコミュニケーションや組織運営にも役立てることができると考えています。安心安全を感じることができる組織風土・文化をつくっていけるよう、これからも努力を続けます。
今回は、1回目で学んだ支援姿勢をベースに、「支援される側も支援する側も疲弊しないための意識」について学びました。以下は反貧困ネットワークの教育研修担当の高澤さんのまとめレポートです。
<第1回目の復習>
①Non-judgemental(ノンジャッジメンタル) ・・・決めつけない姿勢。自分の価値観は外に置いて傾聴する。
② Genuineness(ジェニュイネス )・・・支援員という仮面を被らず、対等なひとりの人間として、クライエントと率直な対話を行うこと
③同情と共感の違い・・・同情=「何とかしてあげたい」と相手の問題が自分の問題になってしまい、上から目線となる。共感=相手の立場に立ち理解しようとすること。対等な目線となる。
④アドバイスと情報提供の違い・・・適切なアドバイスとは、アドバイスした結果を自分で負えるアドバイス。情報提供は選択肢を提示するだけで、選ぶのは本人。エンパワメントにつながる。
<第2回目の内容>
傾聴ロールプレイ:相談員の対応を批判してみる
・批判をすることで「よりリスクの少ない対応」について考え、意識化する。
・仲間を批判したら組織は成り立たないので、研修等で人を傷つけない形で批判をすることが大切。
①自由回答式質問
・相談者が現実・事実と向き合えるような質問をすることで、支援者の「思い込み」や「決めつけ」を減らす。
・個人でなく問題に焦点をあてる。個人(性格・資質・癖)を変えることは出いないが、問題には対処することができる。
・意思疎通を妨害する言葉や言い回しは、相談者を傷つけコミュニケーションを閉ざしてしまう。
例)「あなたは”いつも”そうなんだから」、「みんな”絶対”に無理だと思っているよ」、「”あなたの能力では”その仕事は無理」
②希死念慮を持つ相談者への対応
・チェックリスト
自殺未遂歴、計画的な身辺整理、アルコール・薬物依存症、落ち込みやうつ症状(双極性障害)、家族・友人知人など近い関係の欠如、合理的思考の欠如、突然明るく元気になった、サポートシステムの欠如
・サインに気づいたときは、一歩踏み込んで声をかける。「この間までとはずいぶん様子が違うんだけど、何かあった?」
③あなたが目指す支援とは?
詩を読んで自分が目指す支援について考える。
④相手の力を信じる
相談者はその人自身の人生のエキスパート。どんなに困難な状況でも、それまで人生をサバイバルしてきた力が、その人にはあるということを忘れずに。相談者の力を信じ、自分で判断し、選択することができる支援(エンパワーメント)を提供すること。