齋藤法務大臣が、2023年8月4日の記者会見において、非正規に滞在する日本生まれの子どもとその家族の在留特別許可を公表し、「一定の要件」を満たす非正規滞在者に一律に在留を許可すると表明したことをうけ、反貧困ネットワークとしては外国人支援の現場で接している当事者の困難、仮放免高校生奨学金プロジェクトで支援している高校生の状況と分断状況を憂慮し、反資困ネットワーク単独でも声明を発表する事にしました。

声明―すべての仮放免の子ども・若者とその家族に対する在留資格の付与を求めます―人権保障に条件を付けないでください

8月4日に、齋藤法務大臣が、一定の条件を満たす仮放免の子どもへの在留資格付与を発表しました。私たち生活困窮者支援団体が伴走する人のなかにも、今回の措置の対象となる子どもたちが存在します。いっぽう、対象とならない仮放免の子ども・若者も多数存在します。反貧困ネットワークの、「仮放免高校生奨学金プロジェクト―私たちはあなたを見捨てない」には、23人の仮放免の高校生が参加していますが、そのうち約5人しか今回の在留資格付与の条件を満たしていません。小中高と日本の学校に通い、日本で専門学校や大学に進学を希望している子どもたちが、日本生まれでなかったり、親が条件を満たさないという理由で、排除されているのです。
仮放免の外国人は、就労を禁じられ、ほとんどの公的サービスから排除されているため、極度の生活困窮を経験しています。子どもたちは修学旅行をあきらめ、部活動をあきらめ、県境を越えて友だちと遊びに行くことすら、あきらめざるをえません。
生活困窮の問題以上に、在留資格がないがゆえに「日本にいてはいけない人」として存在を否定され、人権すら保障されない、つまり人間扱いされない苦しみは、私たち支援者の想像を絶するものがあります。
在留資格の付与は、仮放免の子どもたちとその家族が、日本ではじめて人間として認められ、人権を保障されることを意味します。民主主義国家が人権保障に条件をつけるなど、言語道断です。無条件で、すべての仮放免の子どもとその家族に在留資格を認めてください。
また、日本で小中高に通ったのちに、専門学校や大学を卒業し、すでに成人となり、なお 仮放免状態にある外国人の若者たちとその家族も排除しないでください。
私たちは、支援を通じて知り合い、かれらが日本社会で築いた人間関係のほんの一端にすぎませんが、私たちにとって、かれらはすでにかけがえのない存在となっています。まして、地域社会において、家族や友だち、学校の仲間や職場の同僚と築いてきた関係が、長きにわたればそれだけ、分かち難いものとなることは当然ではないでしょうか。
以上の理由から、日本で学校教育を受けた仮放免の子ども・若者とその家族に対して、無条件で在留資格を認めることを強く要求します。
2023年8月10日 一般社団法人反貧困ネットワーク