私たちは、生活困窮者を支援する市民団体です。私たちは、国籍や在留資格に関係なく、誰であろうとも、人として尊厳ある生活を実現するための支援をしています。
 今、参院選を前にして、政府やいくつかの政党による「外国人が日本の社会保障の負担になっている」、「不法滞在の外国人が治安を脅かしている」、「日本は外国人の人権が守られていない国だから、来ない方がよい」とする排外主義的言説が蔓延しており、私たちが支援する人たちが標的にされています。
事実は、まったく異なります。外国人は、在留資格によっては、ほとんどの社会保障制度から排除されているからこそ、私たちのような民間団体が、市民からの寄付を財源にし、外国人の生活困窮者の生存権を保障するために活動しているのです。


 そもそも日本の貧困問題が深刻化しているのは、2001年の「聖域なき構造改革」以降、社会保障をはじめとする公共サービスが削減されてきたからであり、外国人の責任ではありません。それにもかかわらず、「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」が掲げられ、外国人がいなくなれば社会問題が解決するかの如き政策が展開されています。 「ルールを守らない外国人」として標的にされている「不法滞在者」とは、私たちが支援する仮放免者です。仮放免者は、ほとんどすべての社会保障制度の利用ができないため、衣食住のすべてを民間の支援に頼らなくては生きていけない生活困窮を経験しています。そのような状態に20年、人によっては30年以上置かれています。日本生まれの仮放免の子どもたちもいます。


 かれらは、安全・安心な生活を送るために、日本に滞在することを希望しています。ただただ、平和に、尊厳を持って生きるために必死であることが、日本の安全・安心を脅かすのでしょうか。「犯罪」なのでしょうか。
民主主義社会に「存在そのものが不法」とされ、生まれた時から人権を保障されない人が存在することのほうが、問題ではないでしょうか。入管のルールのほうが、グローバル化した社会の現実に合っていないと考えるべきではないでしょうか。
外国人の人権が守られていないのならば、制度のほうを変更すべきであり、差別される当事者を排除することで問題を隠蔽するのは本末転倒ではないでしょうか。


 歴史上、外国人を敵視し、排除することで、豊かで平和になった国はありません。むしろ排外主義が虐殺や戦争につながることは歴史が示しているとおりです。
 排外主義により日本人と外国人を分断するのではなく、国境を越えて通用する普遍的人権の観点から日本の政治を構想できる政治家が国政を担うことを私たちは望みます。


一般社団法人 反貧困ネットワーク

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・「ママ、誰からもらったの」答えられなかった理由 仮放免の現実(https://mainichi.jp/articles/20250710/k00/00m/010/352000c

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